2023.11.9
こんにちは、中原です。当事務所ではハンドクラフトも行なっているのですが、先日、「マッチ風マグネット」というアイテムをリリースしました。詳しくはこちらのリンクからご覧下さい。
https://craft.nakaharaidea.com
僕が「今、こんな昭和風のお店があったら行ってみたい」と思う、架空のお店をデザインしています。裏面にマグネットが付いているので、冷蔵庫に貼り付けたりして活用頂けます(マッチは入っていません)。
元々、古いマッチ箱が好きで、色々集めたりしていたのですが、だんだん自分でもマッチ箱をデザインしたくなったというわけです。
ということで、今回は僕が持っている中から、ボウリング場のマッチ箱を紹介したいと思います。
支配人との思い出
僕の住んでいる岡山市内で、かつて営業していたボウリング場です。
この女性のフォーム、足の位置とか、左腕が横に伸びているあたりとか、割と正確だなと思います。欲を言えば、右腕をもっと上に振り抜いていれば上級者っぽい感じになったかもしれません。
裏面です。所在地のところに中央会館とありますが、このビルには後年、ダイエー系の「トポス」というスーパーが入ります。そしてボウリング場の名前も「アイビーボウル」に変わります。
実は僕はこの「アイビーボウル」には何度か行ったことがあります。「2フロア26レーン」とありますが、僕が行った頃は既に客足も遠のいていて、1フロアしか営業していませんでした。
経営的にも苦しそうな感じで、レーンもかなり老朽化していた覚えがあります。
ある日、職場の同僚たちと一緒にプレイしていたら、老齢の支配人がふらっと現れて、「君らにフォームを教えたるわ」と声を掛けてきました。あまりの初心者ぶりを見かねたのかもしれません。
僕らもこのままのフォームじゃダメなんじゃないかと思っていたところだったので、渡りに船という感じでレクチャーしてもらいました。
そのときに支配人が教えてくれたのが、ボールはカーブをかけながらレーンの右側を転がるように投げて、ボールが先頭のピンに斜めに入るようにすると。それが基本だと。下の図のような感じです。
こういうカーブのかかった投げ方をしようとすると、必然的にボールを投げた後の右腕は上方向に振り抜いた感じになるんですね。上級者っぽくなるフォームというのは、そういうことなんです。
わかったようなことを書いていますが、あくまで理論的にはそうなるというだけで、僕自身はボウリングは上手くないです。
当時、支配人は60代半ばぐらいだったでしょうか。飄々とした感じと同時に、静かな威厳がある人でした。何度かお手本を見せてくれたのですが、白鳥が舞うようなとてもきれいなフォームで、今でも忘れられないですね。
結局、それから1年も経たないうちにアイビーボウルは廃業してしまいました。今から思えば、僕らに会った頃の支配人はすでに廃業を知っていて、若い僕らに何かを残そうとしたのかなという感慨もあります。90年代の終わりぐらいの話です。
コンピューターシステムの謎
こちらも同じく岡山市内で、地元のバス会社が運営していたボウリング場です。残念ながら、既に閉鎖されています。
このボウリング場は明るい雰囲気があって、好きでしたね。初めてプレイしたのは高校生の頃だったと思います。当時はまだ土曜日は午前中に授業があって、そのあと、クラスメートと一緒にここへ行ったりしたものです。楽しかったなあ。
裏面です。コンピュータシステムとありますが、これがよくわからないのです。
今でこそボウリング場のスコア計算はコンピューターが自動的に実行してくれますが、僕らが高校生の頃、両備ボウルではまだ客が手作業で紙に記録していました。1986年ぐらいですね。
ところが、地図の中に「専売公社」とあります。専売公社がJTに変わるのが1985年なので、このマッチ箱が作られたのは1985年以前でしょう。
そうなると僕らがここに行っていた頃には、すでにコンピュータシステムが導入されていたことになります。
この矛盾をどう考えればいいのか。ひょっとしたらスコア計算とは別の、何らかのコンピュータシステムが稼働していたのでしょうか。
そのあたりがどうも不思議ではあるんですが、まあ、ひとつの謎として留めておきましょう。
ともあれ、マッチ箱の話をするはずが、すっかりボウリング場の思い出話になってしまいました。
でも、そうやってマッチ箱には、かつての街の記憶、時代の記憶が封じ込められていたりするんですね。そこが古いマッチ箱の魅力でもあります。