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オリエンシートにChatGPTを活用

    winetop

    2023.8.7

    こんにちは、中原です。今回はオリエンシートの作成にテキストAI(会話型AI)を活用する話です。

    オリエンシートとは

    デザイン発注の際に必要になるのが、オリエンテーション(略してオリエン)です。
    どういうデザインを作って欲しいのか、依頼主がデザイナーに伝える作業ですね。

    作って欲しい内容をあらかじめ文書にまとめたものが「オリエンシート」で、オリエンの際には、これをもとに打ち合わせすることが多いです。
    ただ、デザイン発注に慣れていない依頼主にとっては、伝えたい事柄を整理するのは、なかなか大変です。

    そこでオリエンシートの作成にテキストAIを活用してみては、というわけです。

    ワインショップの店頭ポスター

    店頭ポスターを作りたいと思っているワインショップという設定で考えたいと思います。

    テキストAIはChatGPT の有料版を使います。有料版では言語モデルのバージョンを選べるのですが、より最新のGPT4を選択します。

    GPT4に相談する内容は下記の通りです。

    ワインショップで今回、ワインを販売することになりました。こんな商品特性を持っています。

    ・カリフォルニア産の赤ワインで1本3000円
    ・同価格帯の中でも非常に優れた品質
    ・但し、生産者は新興のワイナリーで知名度はない。

    このワインを顧客にアピールするため、店頭ポスターを作ろうと思っています。
    ただ、デザイナーに依頼するにあたって、どのような方向性で訴求するか、まだ整理できていません。 何か良いアドバイスはないでしょうか。

    僕がワインショップの店主になりきって(ワインは詳しくないのですが)、GPT4に相談していきます。
    GPT4とのやりとり全文は下記のリンクからご覧いただけます。
    ワインショップのポスター作成

    相談内容ですが、上記の情報だけだと、デザイナーはかなり困ると思いますね。
    コストパフォーマンス重視にするのか、カリフォルニア産に重点を置くのか、色々な切り口が考えられるので、そのあたりの判断に迷います。

    実際は依頼主とデザイナーの打ち合せで、話し合いながら方向性を決めていくことも多いのですが、ある程度、事前に内容を固めておいた方がデザイナーともより深い議論ができると思います。

    では、GPT4の回答を見てみましょう。

    色々な提案をしてくれましたが、やはり1番目の「新興の魅力を強調」が目を引きます。
    知名度の低さを逆手にとる、というわけです。こういう提案が出てくるのはすごいなと思います。

    例えば、ミーティングで進行役の人から「これはネガティブな要素です」と言われると、参加者がみんなそう思い込んでしまうことがあります。そうなると、なかなか別の角度からの発想は出てきにくい。
    その点、場の空気に引っ張られないのがAIのひとつの長所でしょうね。

    「新興の魅力を強調」は、とても気に入りました。
    一方で、コストパフォーマンスがいいのは確かなのですが、価格が前面に出るような訴求だと安っぽくなるような気がします。

    率直に感想を伝えます。また、懸念することがある場合にも素直に伝えるのがいいと思います。

    人間同士の打ち合せだと、「こんなことを質問して笑われないだろうか」という気後れがあったりするかもしれませんが、相手がAIの場合は心おきなく質問できます。

    尚、同じページ(スレッド)でやりとりする分には、GPTは文脈に沿った回答を返してくれます。ただ、他のスレッドでやりとりしたことは把握できません。

    GPTの回答は下記の通りです。

    これも面白い回答だと思います。
    とくに1番目の「価格よりも『発見の喜び』を強調する」というのは、なかなかやるなという感じです。

    何気ないひとことから思わぬ展開に

    途中のやりとりを少し飛ばします。

    カリフォルニアのイメージなのですが、お客様の中には「ワインはやっぱりフランスだね」という方もいらっしゃいます。
    そういう方にも試して頂くにあたって、カリフォルニアのイメージが前に出るのはどうなのかという疑問もあるのです。

    特定の銘柄にこだわりを持っているお客さんに対して、嗜好を変えてもらう試みは、しばしばマーケティング上の課題になります。

    「一度試してもらえれば良さはわかるはず」というときには、そのハードルをできるだけ下げる、あるいはちょっと試したくなるきっかけを作る、そういう手法が正攻法になると思います。

    GPT4の回答もそういう方向になっていますね。
    個人的には「体験の提供」というのは、なかなか面白い発想だなと思いました。

    「新しい体験の提供」がいいように思います。
    エクスパートの推薦は難しいかもしれません。私からのおすすめメッセージなら、用意できますが。

    と返答したのですが、「私からのおすすめメッセージなら、用意できますが」と何気なく付け加えたひとことによって、話はここから急展開を見せます。

    非常にいい視点を提供してくれていますね。

    ワイナリーや風味の情報を伝えることも大切ですが、それはある意味、どこのお店でも提供できる情報です。
    しかし、ワインショップの店主がどう感じたかは、そのお店でしか提供できない貴重な情報で、同じ商品を伝えるにしても実感のこもった奥行きが出てきます。

    とくに「体験の共有」というアプローチは、顧客にとってリアリティのある情報になるでしょう。

    なるほど、「体験の共有」はいいかもしれません。実際、感動したのですが、それをそのまま伝えれば、売り手と買い手という関係を越えた、親密な空気を伝えられるかもしれません。

    架空の設定なので、実際にはワインを飲んでいないのですが、話を進めるためにも、感動したということにしてください。

    「顧客はただワインを購入するだけでなく、あなたの旅の一部に参加するという感覚」というのも優れた視点だと思います。
    ワインという商品だけではなく、店主の感動を追体験する、それも合わせて購入するというわけです。

    こうなってくると、店主の体験や実感をメインに訴求した方が、面白くて伝わりやすい訴求になるような気がしてきます。
    その旨をGPT4に伝えて、オリエンシートにまとめてもらうことにします。

    できあがったオリエンシート

    オリエンシートを見てもらう前に、最初の状態を改めて確認しておきましょう。

    ・カリフォルニア産の赤ワインで1本3000円
    ・同価格帯の中でも非常に優れた品質
    ・但し、生産者は新興のワイナリーで知名度はない。

    始めにわかっていたのは、この3つだけですね。
    GPT4にまとめてもらったオリエンシートが下記の通りです(訴求方向性以下を抜粋しています)。

    あの3つの項目から、よくぞここまで辿り着いたという感じがします。

    オリエン時にここまで方向性がはっきりしていれば、デザイナー側からは「雑誌のコラムのような見せ方もありですね」とか、「店主さんの写真も載せましょう」とか、一歩踏み込んだ提案ができます。

    方向性が固まっていると、より深い議論ができるというのはそういうことなんです。

    最後に、このオリエンシートに基づいて作ったデザイン案を載せておきます(画像はストックフォトなどを使用しています。内容は全くのダミーです)。

    まとめと注意点

    GPT4とのやりとりを見ていきましたが、いくつか注意点があります。

    ■同じ質問をしても同じ回答になるとは限らない
    同じ質問をしても時と場合によって、回答内容が異なります(とはいえ、ある一定の範囲内に回答のバリエーションは収まりますが)。

    思うような答えがもらえない場合には、「他にアイデアはないですか?」と聞いてみるのも一つの方法です。

    ■画期的なアイデアは出てこない
    たしかに優れた着眼点などは出してくれるのですが、誰も思いつかなかったような画期的な発想はまず出てこないと思ってください。

    学習した結果を抽出するAIなので、その着想はむしろ常識的です。ただ、常識的であっても役に立たないわけではなく、論点を整理していくことで、問題解決の糸口が見つかることはあります。

    また、やりとりしていくうちに、ユーザー自身が新しいアイデアを思いつくことがあります。これがけっこう馬鹿にならないです。

    ■できるだけレスポンスする
    GPT4が提示してくれたアイデアに対して、いいと思ったら「いいですね」と返事した方が、さらに発展したアイデアを出してくれる可能性が高まります。
    また、ユーザー側で思いついたアイデアがあれば、「こんなの、どう?」とGPT4に聞いてみることをおすすめします。

    これはAI相手のことだけではなく、人間同士のミーティングでも同じだと思うんですね。アイデアを出しても、メンバーからの反応がない状況だと、やはり議論は深まらないと思います。レスポンス、大事です。

    あと、ちょっとしたアイデアでも、できるだけ面白がる、あるいはアイデアが転がるようにする。それもけっこう重要かなと思います。

    ということで、ChatGPTをデザイン発注に活用する方をご紹介しました。ご参考になれば幸いです。

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