2023.6.2
こんにちは、中原です。今回の記事では、テキストベースのAIがデザイン仕事にどれだけ活用できるのかを探りたいと思います。
AIに依頼する内容は「フォント選び」ですね。「こういう感じのフォントを探してるんだけど、いいのがないかなあ」という状況は、デザイナーにとって日常的によくあることだと思います。
ChatGPT の有料版を使います。有料版では言語モデルをGPT3.5とGPT4から選べるのですが、より最新のGPT4を選択します。ちなみに無料版はGPT3.5のみので、精度はよろしくないので、今回は使いません。
ということで、有料版のGPT4はまだ使っている人もそんなに多くないと思いますので、どこまで活用できるものなのか、その参考になれば幸いです。
ハンバーガーショップの店名 — Adobe Fontsから
GPT4には、ハンバーガーショップの店名にふさわしいフォントを考えてもらいます。下記のようなプロンプト(指示内容)で始めます。
新たにハンバーガーショップを開店します。
名前は『Manzoku Burger』です。
低価格で、若い人たちに喜んでもらえる大衆的なお店にしたいです。
そこで『Manzoku Burger』にふさわしいフォントを、Adobe Fontsの中から5案提案してください。
フォントはAdobe Fonts収録のものに限定しました。後ほど、Google Fontsの例も紹介します。
それから、GPT-4は10案でも20案でも提示できますが、あまり多いと見ていくのも大変なので、今回は5案に絞ります。
GPT4の回答は下記のとおりです。
ブランドイメージを理解して、そこから「カジュアルかつ親しみやすいフォント」という方向性を出しているのは、当然のようで、意外とすごいなと思いますね。
「若者向けのデザインにしばしば用いられる」などのコメントが書かれていますが、どの程度の信頼性があるのかは疑問です。鵜呑みにしない方がいいでしょう。
プロンプトの内容によっては参照先のURLも生成してくれます。ただ、Adobe Fontsに関してはなぜか生成してくれません。このあたりは相性があるのかも。
それから、Adobe Fontsに収録されていないフォントがあります。
GPT4は2021年までのデータを参照しているので、その当時までは収録されていたのかもしれません。あるいは、単にGPT4のエラーである可能性もあります。
表示できるフォントだけ表示してみましょう。下記の図は僕がIlustratorで作っています(GPT4が作ってくれたらありがたいのですが)。
どうでしょうか。大きく外したものがないのは、偉いところでしょうか。これがそのままロゴタイプになっていても不自然ではないですね。
とはいえ、もう少し個性的なフォントも見てみたいな、と思います。
「Adobe Fontsに入っていないフォントが混じっていますね。もっと元気があって、ポップな感じのフォントはあるでしょうか。」と軽くたしなめながら、追加提案を頼んでみます。
謝って頂きましたが、Lobster TwoはやはりAdobeには見当たらず。もう、このあたりは諦めるしかないでしょう。
その代わりにGoogle FontsにLobster Twoがあったので、それを使うことにします。
「フレンドリーで楽しい感じ」とか「元気でポップな雰囲気」と書かれていますが、GPT4がそう考えているわけではなくて、そのフォントが誰かによってそう説明されたことが過去にあって、そのデータをGPT4が参照しているようです。
そのため、参照されるデータやその取り扱い方が誤っていると、答えが的を外す可能性があります。
うんうん、個性的なフォントが入ってくるようになりました。
FunkydoriとかLobster Twoとか、デザイナーがわざわざ探すとしたら、このあたりだと思うんですよね。お馴染のフォントであれば、探す必要はないので。
「けっこういいですね。さすがです」と感謝の念を伝えます。
こうやって喜んでもらえると、こちらも嬉しい気持ちになります。
せっかく「成功を祈っています!」と締めの言葉をもらったのに、大変心苦しいのですが、「Funkydoriのような感じで、もう少し他にあるでしょうか」と追加提案をお願いします。
GPT4の回答は割愛して、フォントの結果だけ紹介します。
正直な感想を言うと、「こっちの方向へ行ってしまったのか」ですね。イメージしていたのと違いました。
ただ、それが悪いのかというと、一概にそうとも言えず。
Thirsty Roughのようなグランジの質感を伴ったフォントは想定外でしたが、これはこれでありかもしれないという気もします。
Fairwaterにしても、これをネオン風に加工するのもいいかもしれないなと。
後ほど書きますが、思っていたのと違うからという理由で、すぐにダメ出しをするのではなく、一度立ち止まって考えても良いのかなと思います。
招待状のフォント— Google Fontsから
次に結婚式の招待状のフォントをGPT4に提案してもらおうと思います。
結婚式の招待状をデザインします。封筒にはInvitationという文字を入れますが、この文字のフォントを探しています。
格調の高さと装飾性を持つ、カリグラフィックなスクリプト体のフォントをGoogle Fontsの中から探して、5案提案してください。
今回はGoogle Fontsの中から提案してもらうことにします。
GPT4の回答は下記のとおりです。
フォント名に下線がありますが、これはリンクを貼ってくれているんですね。Adobe Fontsのときには何度頼んでも貼ってくれなかったですが。
それから他にも数回試したのですが、Google Fontsの場合には、ほぼ収録されているものを提案してくれます。AdobeよりもGoogleの方が相性が良いのかもしれません。
では、どんなフォントなのか出力してみましょう。
Tangerineは僕の思い描いていたイメージにかなり近いですね。
Great Vibesも悪いわけではないのですが、もう少し格調の高さが欲しい感じ。
それ以外はフリーハンドっぽいカジュアルな方向かな、と思います。
再度、「Tangerineに似た感じの優雅なスクリプト体をさらに5案お願いします。カジュアルなものは無しで」と追加提案を依頼します。
GPT4の回答はもう割愛して、フォントの出力のみで。
「カジュアルなものは無しで」と頼んでも、カジュアルなフォントが出てくるわけですが、最後のPinyon Scriptはかなりいいですね。
スクリプト体の場合、格調高いカリグラフィックな方向と、手書きでさらっと書いたようなフリーハンド系がどうしても混在してしまうので、的を絞ってもらうのが結構難しいかもしれません。
とりあえず、以上にしたいと思います。
使ってみての感想
上記に挙げた以外にも、何度かフォント選びさせてみましたが、探し求めているものをズバリと見つけ出してもらうのは結構難しいですね。
もしかすると、プロンプトの書き方次第で、もっと精度は上がるのかもしれませんが…。
ただ、発想の糸口を掴むために、GPT4と会話してみる。そういう使い方はありかもしれません。
イメージしていたのと違うものが出てくるのも、一概にダメというわけではなく、選択の幅を拡げたいとか、固定観念に縛られない発想が欲しいときには、むしろ、変化球的なものを提案される方がありがたいでしょう。
デザイナー以外でも、モノを作ったり企画を立てたりする人は、周囲の同僚などに「いいアイデア、ない?」と尋ねることはあるでしょう。が、そんなに素晴らしいアイデアが即座に貰えることってあまりないと思うんですよ。
その代わりに、あれやこれやガヤガヤ話し合っているうちに、なんとなく考えがまとまったり、ちょっとしたことを思いついたりすることはあると思います。
そんなふうに、切れ味の鋭い答えを求めるのではなく、ブレーンストーミング的と言いますか、心に余裕のある感じでGPT4とのやりとりを楽しむ、そういう使い方が良いのではないかと思います。
ご参考になれば幸いです。