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価格表記のフォント

    2022.1.18

    チラシやパンフレット、カタログに掲載する価格。「値組み」とも呼びますが、この価格表記にどんなフォントを使うか、デザイナーにとってはひとつの考えどころではないでしょうか。

    価格をどう見せるかは業種や媒体などによっても変わってくる、意外と奥の深い世界。今回はこの価格表記のみに着目して、フォントを考えてみたいと思います。

    最初はDINです。デザインに詳しくない方でも「どこかで見たことがある」と思われるかもしれません。代表的なところで言えば、ユニクロで使われているフォントがDINをベースにしたものですね。

    また、ユニクロ以外のチラシでもかなり見かけます。視認性が良くて、シャープなフォルム。情報量の多いチラシでも埋没しにくく、目に留まりやすいあたりが支持されていると思います。

    アパレルから家電、大手スーパーまで幅広い業種で使われていて、チラシはもちろん、通販カタログなどでも多用されています。価格表記の一大勢力と言ってもいいのではないでしょうか。

    Avenirの数字もDINと似たようなテイストを持っていて、割と目にします。上の例で言えば、一番違うのは0でしょうか。
    DINの0はかなり直線的でしたが、Avenirは丸みを帯びています。カンマもDINが垂直に下ろされていたのに対し、Avenirは角度がついています。DINに比べると当たりが柔らかい感じ。

    Myriadになると、DINよりもかなり曲線的。9の文字も緩やかなカーブを描いています。カンマも薄く曲がっています。DINほどシャープにしたくない、少しソフトな雰囲気にしたいときには、Myriadも選択肢に入ってくるでしょう。

    価格によく使われる数字は9、8、0あたり。それにカンマ。ですので、このあたりの字形がけっこう全体の雰囲気に影響を与えると思います。

    ちなみに小塚ゴシックの欧文と数字はMyriadをベースにして作られています。パッと見たときの印象はかなり似ていますね。小塚ゴシックの方がフトコロが広い感じでしょうか。

    Impactです。一時期に比べたら見かける機会が減ったように思いますが、セール系の媒体では今でも使われているようです。タイトルや見出しなどで価格訴求をしたいときにも用いられたりしますね。

    文字間の隙間が生まれにくい字形で、さらに輪郭にフチなどをかけていくと、非常に迫力が出てきます。色数の多い紙面でも埋もれにくい力強さがある反面、うっかり使うと一気に紙面全体のバランスを崩してしまう劇薬のようなフォントでもあります。

    Helveticaのような書体は価値訴求の媒体、例えば通販カタログなどで目にすることが多いように思います。
    読者にじっくりと商品説明をして価値を感じてもらう、それが主眼になっている紙面では必ずしも価格を大きく目立たせる必要はないのですね。とくにファッション系の紙面だと、全体の雰囲気と価格表記が上手くマッチしている必要はあるでしょう。

    こういう価値訴求の媒体では、他にもUD新ゴなどをよく見かけます。見出しや本文との兼ね合いで、価格表記のフォントも決まってくる。そんな感じでしょうか。

    Caslonのようなセリフ体は、価格訴求の媒体などではあまり使われないように思います。価格を目立たせたいときに、線幅に強弱がある書体はどうしても限界があるので。

    使うとすれば、1000円割引とかのクーポン券などですね。これは逆にサンセリフ体だと物足りないと言いますか、そっけない感じになります。やはり、ニュアンスが必要なんです。特に1の文字が大事で、その点、Carsonの1は良いフォルムをしているなあ、と思います。

    最後にちょっとしたTipsになりますが、価格表記の場合、数字が目に入りやすいように先頭に¥マークが来る場合はひと回り小さくします。
    また、カンマもデフォルトだと下に突き抜けた感じになるので、少し上に移動させることが多いです。こんな感じで、違和感なく数字がスッと目に入ってくることを重視します。

    今回、改めて価格表記にどんなフォントが使われているか、色々な媒体で調べてみました。紹介しきれていないフォントも多々ありますが、ただ、奇抜なフォントはあまり目にしなかったですね。
    やはり、しっかりと値段を伝えたいというのが優先事項のトップになりますから、そうなると自然に、使われるフォントもある程度決まってくるのかもしれません。

    ともあれ、こんなふうに特定の用途に着目して、フォントを見ていくのも面白いと思います。

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