SF映画のタイポグラフィとデザイン

「SF映画のタイポグラフィとデザイン」の表紙

『SF映画のタイポグラフィとデザイン』
デイヴ・アディ著篠儀直子訳、フィルムアート社

すこぶる面白い本なのですが、書店だとデザイン書のコーナーではなく、映画コーナーに置かれたりしています。まずはその点にご注意ください。

それから、この本は著者のデイブ・アディが運営する「Typeset in the future」というサイトの内容をまとめたものなので、英語の得意な方はこちらのサイトを最初に見てもらってもいいでしょう。

SF映画の場面に登場する文字について、その書体を考察する。ひとことで言えばそういう本なのですが、単に「ここに使われているテキストはこのフォント」と特定するような単純な話ではなく、とにかく書体と映画、そして文化にまつわる蘊蓄が凄まじい量なのです。

例えば「2001年宇宙の旅」の章では、作品中に登場する企業名や企業ロゴを拾い上げています。パンナム、IBM、ヒルトン・ホテル、ベル・システム(電話会社)、ハワード・ジョンソンズ(ホテルチェーン)、アエロフロート、BBC放送と列挙しているのですが、僕が映画を観たときにかろうじて気が付いたのはBBCぐらいで、それほど多くの実在の企業が登場していたとは思いませんでした。

尚かつ、作品内で使われているヒルトンのロゴはUnivers 59 Ultra Condensedのようだが、過去にこの書体がヒルトンで使われた形跡はないので映画独自のロゴのようだ、とまで解説していて、恐れ入りましたとシャッポを脱ぐしかありません。

あるいは「エイリアン」のオープニング。直線が少しずつ画面に登場して、何だろうと思っていると「ALIEN」の文字を形作る。これ自体が印象的なシークエンスですが、文字間隔が大胆に開いたHelvetica Blackのタイトルが後続の映画にどれほどの影響を与えたか。「STARGATE」や「GRAVITY」などを例に挙げて見せてくれるのも、うれしい限りです。

とにかく一つ一つの考察に恐ろしく手間がかかっている。それだけでも一見の価値がある書と言えるでしょう。

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